R&D Function Unitでは、パーソルグループおよびR&D Function Unitのバリューを体現した優れた仕事を称賛する「R&D Awards」を毎年実施しています。今年はMVP賞・VP賞・FINE賞、合わせて7つのプロジェクトが受賞しました。その中から、一部のプロジェクトをご紹介します。
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『ミイダス』は、バイアス診断ゲーム(認知バイアスを測定するテスト)やミイダス コンピテンシー診断(特性診断)などを通じて、はたらく人一人ひとりの可能性や特性を可視化し、企業と求職者のミスマッチを減らす採用・転職サービスだ。さらに、採用支援にとどまらず、入社後の定着・活躍、組織のエンゲージメント可視化、人材育成、福利厚生、健康経営支援など、企業の課題を横断的に支えるプラットフォームへと進化を続けている。
企業と個人のより良い出会いを生み出し、その後の活躍まで支援するためには、プロダクトそのものも継続的に進化し続けなければならない。その進化をさらに加速させるため、ミイダスでは、要件定義、デザイン、エンジニアリング、各機能の連携に至るまで、開発プロセス全体にAIを組み込む「AI駆動開発」の実現が求められていた。しかし、AI駆動開発は、AIツールを導入するだけで進むものではない。専門人材が力を発揮できる受け入れ体制の構築や、職種を越えて連携できるチーム文化の醸成が必要だった。
AI駆動開発に必要だった、3つの課題
谷口さんが取り組んだのは、AI駆動開発を加速させるための「専門人材・開発基盤・共創文化」のトータルビルディングである。機能開発の裏側で、メンバーが本来の専門性を発揮できるように障壁を取り除き、AI駆動開発の土台をつくり上げるため、以下の3つに取り組んだ。
- AI専門人材が着任後すぐに力を発揮できる業務環境の整備
- 部署ごとに分断されていた予算・AIツールのアカウント管理の一元化
- 企画・開発・デザインのメンバーが職種を越えて連携するワンチーム文化の醸成
専門人材が力を発揮できる環境を、最速で整える
― 今回の取り組みで、最初の大きな転換点は何だったのでしょうか。
谷口:2025年度下期よりAI駆動開発に向けた基盤整備を進めていましたが、特に大きかったのは12月のAI専門人材の招聘です。我々が掲げるAI駆動開発のさらに先を行くようなスペシャリストを迎え入れ、プロジェクトを引っ張ってもらう必要がありました。
ただ、企画と開発を横断する前例のないポジションだったので、これまでと同様に迎え入れるだけでは不十分でした。その方のスキルをフルに活かすためには、高スペックなパソコンやAIツールをすぐに使える環境が必要でした。専門人材が本来のパフォーマンスを発揮するまでのロスを、できるだけなくすためにも、社内のIT担当者にも協力してもらい、着任後すぐに開発へ入れる状態を万全に整えました。

部署ごとの管理を越え、プロジェクト単位で動ける仕組みへ
― AIツールや予算の管理体制も見直されたそうですね。
谷口:はい。背景として、以前は要件定義からデザインまで手作業のアナログなリレーを行っており、1機能の開発や改修に1〜3ヶ月、長いもので半年以上かかるものもありました。さらに、開発部とプロダクト事業部でツールや予算管理を別々に行っており、AIツールを使うにも部署ごとの調整や連携のコストが発生していました。
そこで、CTO(Chief Technology Officer)眞下さんやCPO(Chief Product Officer)辻さん、経営管理などに相談し、部署横断のプロジェクト単位でアカウントを共有し、予算を持つ形に変えていきました。
そうすることで、利用状況も見えやすくなり、ツール内で情報も共有しやすくなりました。それもあり、今ではAI駆動の開発チームにおいて、従来の約6倍のスピードで進行することができ、通常なら約半年かかる開発期間を約1ヶ月へと大幅に短縮しました。通常1ヶ月以上かかる部分改修も最速1週間で対応可能となっており、デザイン制作を含めたすべての工程において、同様のスピード感でプロダクト開発を進めることができるようになりました。
個人情報の扱いなど乗り越えるべき壁はまだありますが、開発スピードと品質をさらに高める基盤を現在も整えているところです。
AIハッカソンで、職種を越えた“ワンチーム”をつくる
― 開発基盤を整えることだけでなく、チームの文化醸成にも取り組まれたのですね。
谷口:はい。開発部とプロダクト事業部で、感情的な壁が大きかったわけではありませんが、「ここは開発(または企画)の管轄だよね」といった明確な棲み分けによる壁はありました。
AI駆動開発を進めるには、そうした職種や部署の境界を越えて、同じ目的に同じ目線で向かうための場が必要だと感じていました。その一つとして実施したのが、AIハッカソン*1 です。
オフィスの会議室を借り、会議から懇親会につなげる動線やケータリングまで設計しました。内容としては、現在注力している「ミイダス AIバディー*2 」の草案となる採用支援ツールを作るというお題に取り組んでもらいました。2つのチームに分かれて、その場でAIを使ってツールを作り込むというものです。フロントエンドとバックエンドの担当者がバランスよく混ざるようにチームを分け、最後はマーケティングの担当者などに審査員をお願いして、デモを見てもらいました。
AIハッカソンは非常に盛り上がりました。普段はオンラインをメインに業務をしているメンバーが、オフラインで顔を合わせ、同じテーマに向かって手を動かすことで、チームワークの醸成につながったと思います。開発部とプロダクト事業部との距離も縮まり、メンバーの結束はさらに強くなりました。
*1:AI(人工知能)技術を活用してアイデアの創出からプロダクト開発までを短期間(数時間〜数日)で行う開発イベント。
*2:「ミイダス AIバディー」:ミイダスがこれまで蓄積してきた約45万社のビッグデータ(2026年5月時点)とAIを活用し、採用戦略立案(求人・スカウト)から定着・活躍といった人材領域を分断せず、“人の価値を可視化し、活かし続ける”社会の実現を目的とした新たな取り組み。
“見えにくい調整”が、挑戦に集中できる環境をつくる
― 谷口さんの動きを見た、周囲からの反応はどのようなものでしたか?
谷口:そうですね。自分のポジションは、目に見える実績が出にくいところもあると思っていました。でも、CPO辻さんから「谷口さんの業務や貢献がなかったら、AI駆動開発は実現しなかった」と言ってもらえたのは、本当に嬉しかったです。
現場メンバーからも、アカウントや予算に関する相談が直接来るようになりました。組織をまたぐ煩雑な調整を引き受けることで、メンバーが本来のクリエイティブな議論や開発に集中できる。その状態をつくれたことが、自分にとって大きな意味のある成果だと思っています。
それぞれの力が発揮される組織を、これからもつくっていきたい
― 今後、さらに挑戦していきたいことを教えてください。
谷口:先日ローンチし、現在も企画・開発に注力している「ミイダス AIバディー」は、まだまだこれから進化させていくプロジェクトです。その実現に向けて、スキルの高いプロジェクトメンバーが実力を発揮できるように、障壁をなくし、環境をつくっていくことが自分のミッションだと思っています。
AI駆動開発は、技術だけで進むものではありません。人が動きやすい仕組み、職種を越えて連携できる関係性、安心してツールを使えるルールや環境が必要です。組織形成の面でも、新たな形をつくっていくことに興味があるので、今後も前向きに取り組んでいきたいです。

💡バリュー体現ポイント
■ふつうを疑う(OUT OF BOX)
「ツールや予算は部署ごとに管理する」という前提を問い直した。AI駆動開発という新しい挑戦に合わせ、プロジェクト単位で予算・アカウントを一元管理する仕組みをつくり、組織間の壁が引き起こす業務上のボトルネックを解消した。
■速さを武器に(VALUABLE SPEED)
専門人材が着任後すぐに力を発揮できるよう、社内の関係部署と素早く調整し、高スペックのパソコンやAIツールの利用環境を整備した。調整・申請・手配といった裏側の動きを先回りして進め、AI駆動開発の立ち上がりを加速させた。
■それは最後の答えか(DIVE DEEP)
単なる人材招聘やツール導入で終わらせず、企画・開発・デザインが本当に一つのチームとして機能する状態を追求した。AIハッカソンなどでのコミュニケーションを通じて、オンライン中心では生まれにくい密度の高い対話と共創の場を設計し、プロジェクトメンバーの結束を強めた。
💡創出成果
- 生産性の向上:AI駆動開発を支える環境整備により、1案件あたりの平均工数の50%以上を短縮、機能リリース数は23%向上、総投入工数48%削減という結果に貢献した。
- コスト・体制の最適化:プロジェクト単位での予算・アカウント管理、新AIツールの全体利用に向けた導入調整などを推進し、年間約2.4億円の削減と12プロダクトの健全な並行稼働に寄与した。
- 組織文化の醸成:AIハッカソンを含むオフライン合宿を主催し、企画・開発・デザインが職種を越えて連携するワンチーム文化を醸成した。
谷口 浩太郎/Kotaro Taniguchi
ミイダス株式会社 プロダクト事業部
2022年11月にミイダス入社。ミイダスのプロダクト事業部にて、プロジェクト管理や組織横断の調整を担う。
プライベートでは3人の息子とともにサッカーに親しみ、休日は息子の試合観戦や送迎、自身の社会人リーグでのプレーに奔走している。