はたらき方の選択肢を広げ、バリュー発揮のきっかけに。
R&D Function Unitの新たな男性育休制度「ハイブリッド育休」の取り組み

近年、社会全体で取得推進の動きが加速している「男性育休」。国の方針や企業の意識改革も進み、育児のために仕事を休む男性の姿は珍しいものではなくなってきました。「はたらいて、笑おう。」をビジョンに掲げるパーソルグループでも、多様なはたらき方を支援するさまざまな施策が展開されています。

そうした中、パーソルグループの中でも新しい手法や領域における事業開発に取り組むR&D Function Unitでは、多様なはたらき方を推進するため、そして出産・育児というライフイベントを思考の転換のきっかけにするためにも、「ハイブリッド育休」制度を試験的に開始しました。

社会的な背景:育休中の就業を可能にした法改正

R&D Function Unitの「ハイブリッド育休」は、2022年10月の法改正によって新設された「産後パパ育休(出生時育児休業)」という国の制度を活用したもので、「休業中であっても、労使協定のもと労働者が合意した範囲で、一時的に就労できる」というものです。

従来の通常の育休でも、一時的・臨時的な就労は認められていたものの、事前に業務の計画を立てたいビジネスの現場のニーズには対応していないものでした。しかし、新たに設定された「産後パパ育休における一時就業」では、ルールに則って「事前に決めた範囲で計画的にはたらく」ことが法的に可能となったのです。

パーソル総合研究所の調査データによると、男性が育休を取得する上での懸念として、「同僚に迷惑がかかる」「上司、顧客に迷惑がかかる」が高い割合で挙げられています(パーソル総合研究所、2023年6月)。特にチームのマネジメントや重要案件の意思決定を担う管理職の場合、「自分が完全に不在になると現場が立ち行かなくなるのではないか」という懸念から、取得に踏み出せないケースが見受けられていました。

そこでR&D Function Unit では、「産後パパ育休中の一時就業」を、単なる業務の穴埋めではなく、「はたらく側の選択肢を広げ、仕事も育児もあきらめないためのポジティブな仕組み」としてとらえ、その趣旨を込めて名称も「ハイブリッド育休」とすることにしました。

「ふつうを疑う」きっかけに

R&D Function Unitでは、「新手法、新領域で、未来をぬりかえる。」をミッションとして掲げ、新規事業の探索・創造や、パーソルグループ内の既存事業のモデルの変革に取り組んでいます。常に変化する市場のニーズを捉え、これまでにない価値を生み出し続けるために、一人ひとりにR&Dバリュー(行動様式)「速さを武器に」「ふつうを疑う」「それは最後の答えか」の実践を求めるとともに、組織としても、多様な選択肢の中から自律的にはたらき方を選べる環境の整備を追求しています。

そうした中で、今回「ハイブリッド育休制度」の運用を始めた背景には、「はたらく選択肢を広げる」ことに加えてもうひとつ、事業開発組織ならではの重要な狙いがありました。男性社員がこれまでのビジネス中心の生活から一歩離れ、育児や家事の当事者として「異なる立場や視点」を経験することは、仕事における「ふつうを疑う」きっかけにもなり、常識に縛られないイノベーティブな事業開発に繋がるはずであると考えたのです。

しかし、いざ導入するとなると、細かな法律の定めがあり、個別の企業が単独で導入するには運用上のハードルが高い部分も。そこで、R&D Function Unitをとりまとめるパーソルデジタルベンチャーズの人事が旗を振り、手続きやガイドラインを徹底的に整備して、各社の現場へ渡すという対応を行いました。これにより短期間でスムーズなトライアルを実現させることができたことは、R&D Function Unit という組織単位での横断的イニシアチブが意義を発揮した事例ともなりました。

【事例】取得第1号社員の声

R&D Function Unitの1社であるパーソルイノベーションで管理職を務めるKさんは、この制度活用の第一号として、ハイブリッド育休を約1ヶ月間取得しました。

事前に周囲と相談した上で、休暇取得中の1ヶ月間は、週に数時間だけ稼働するスタイル。休暇取得中の稼働は合計6日間、時間にして25時間でした。

取得中のある1週間のスケジュール

終日休暇を取得する日、終日はたらく日、午後だけはたらく日など、会議の予定に合わせて予定を調整。

取得前に抱えていた葛藤

実はKさん自身、以前から育休を取得しようと思っていたと言います。配下の男性メンバーからも「マネジャーが率先して取ってくれないと、僕たちも後に続きにくいです」と背中を押されていたタイミングでもあったそう。

しかし、いざ取得したいというタイミングが下半期の期初という、組織にとって極めて重要なフェーズに重なっていました。メンバーの評価、新しい目標設定、予算の最終調整など、他の人に完全に委任することが難しく、時期をずらすこともできない定型・重要業務も多く集中する時期だっただけに、取得をためらう気持ちが生まれていました。「チームや事業に迷惑をかけたくない、でも育休は取得したい」という葛藤を抱えていたKさんにとって、完全に業務をストップさせずにすむ「ハイブリッド」の形が、取得を後押しする形になりました。

外せない業務と育児の両立、そしてスムーズな復帰

実際にハイブリッド育休を過ごした感想として、Kさんは「結果として、この選択肢があって本当に助かりました」と語ります。期初の評価や予算調整など、どうしても外せないミーティングのタイミングだけリモートワーク等で参加し、それ以外の時間はしっかりと育児に充てることができたと言います。完全に仕事を離れるわけではないため、復帰時の業務キャッチアップが非常にスムーズで、周囲とのコミュニケーションのギャップがなかった点も大きなメリットでした。

「いいとこどり」だからこそ生じる、メリハリの難しさ

一方で、取得してみて初めて分かった難しさもありました。よく言えば「いいとこどり」の制度であるものの、いざ稼働時間になると、普段の業務の延長線上で「普通にはたらいているのと変わらない感覚」に引っ張られそうになる瞬間もあったと言います。仕事と育児の「メリハリ」をどう明確につけるかという点において、自分自身のコントロールも含めて運用上の工夫が必要だと感じたそうです。

制度理解と事前周知が重要

また、第一号の取得者だからこその「気づき」もありました。それは周囲のメンバーとの関わり方です。周囲もKさんに対して「どこまで会議の出席を依頼していいのか」「どのチャットなら反応していいのか」と、距離感を測りかねている様子があったと言います。

これに対しKさんは、「これから取得する人は、あらかじめ周囲に対して『この時間帯、この業務なら対応可能です』という情報を明確に伝えておくと、お互いによりストレスなく過ごせると思います」と、今後の取得者に向けたアドバイスを送ります。

キャリアを見つめ直す時間

今回、ハイブリッド育休を取得したことは、Kさん自身の内面にも変化をもたらしました。Kさんは「仕事と一定の距離を取る時間ができ、自身のキャリアなどについてあらためて考えるきっかけになった」と語っています。

「もともと仕事への思いは大事にしていて、その思いは基本的には変わらない」ということですが、だからこそ一度立ち止まってキャリアを見つめ直す機会は、大事な時間となったのかもしれません。

“カルチャー施策” としての育休
―R&D横断で取り組むことで、より確立された制度へ

「ハイブリッド育休制度」は、育休制度の概念を一歩進め、はたらき方の選択肢を広げるとともに、一つのカルチャー施策としても位置づけたものでした。1事業、1社では難しい制度設計や運用整備の部分も、6社1,600人を横断するR&D Function Unit全体の横断施策として、各社経営層を巻き込んで腰を据えて取り組んだからこそ、実現した導入でもあります。

R&D Function Unit で子供が生まれた男性社員のうち1ヶ月以上の育休を取得する割合は、継続的に増えており、2025年度は62.5%となりました。はたらき方の選択肢を広げるハイブリッド育休制度により、今後さらに、男性が育休取得に踏み出しやすく、またより長期での取得もしやすくなると考えています。

子供の誕生や育児という、人生にとってまたとない時間を大切にすることで、それは視野の転換や思考の深化を得る機会にもなり、業務に戻った時にも、組織の掲げるバリュー「速さを武器に」「ふつうを疑う」「それは最後の答えか」の発揮につながるかもしれない。その仮説が検証されていくのはこれからですが、取得者から得られたリアルな声も反映しながら、今後、さらに制度と運用を進化させていく予定です。