【R&D Awards 2026 受賞者インタビュー】総力戦で挑み過去最高の応募数を記録―自己効力感を高める「歓迎」のUX大変革

R&D Function Unitでは、パーソルグループおよびR&D Function Unitのバリューを体現した優れた仕事を称賛する「R&D Awards」を毎年実施しています。今年はMVP賞・VP賞・FINE賞、合わせて7つのプロジェクトが受賞しました。その中から、一部のプロジェクトをご紹介します。

中途採用支援サービス『ミイダス』はこの4月、サービス開始以来最高となる求職者の月間応募数を記録した。きっかけは、ひとつのUX変革だった。

利用企業の皆様が『ミイダス』に価値を感じ、継続的に利用いただくには、何が最も重要な指標なのか――。プロダクトの価値最大化を担う企画チームの藤元さんは、その問いに答えを出すべく、求職者の実態調査に着手した。そこで分かったのは「面接確約求人」への応募数こそが最重要指標であるという事実。これをもとに、開発・デザイン・分析チームを巻き込んだ横断プロジェクトチームを組成し、前例のない抜本的なUX変革に挑んだその軌跡に迫る。

データが示した「登録初日」という鍵

プロジェクトのきっかけを教えてください。

藤元:はい。「利用企業の皆様に『ミイダス』に価値を感じてもらい、満足して使い続けていただくためには何をすべきなのか」という観点で、改めて全社のデータを見つめ直しました。その結果、企業の継続利用に最も影響していたのが、「面接確約求人」への応募数であることが分かりました。「面接確約求人」とは、企業が設定した条件に合致した求職者が登録すると、すぐに自動で送付される求人のことです。

さらに、「面接確約求人」に応募した方のログを、秒単位でミクロに追ってみたところ、そのほとんどが登録初日に応募しており、初日を過ぎるとその後に応募するケースは非常に稀だということが分かりました。ちなみに、初日の応募者は、その後も『ミイダス』を積極的に利用する率が高いということもわかりました。

つまり、求職者の熱量が最も高い登録初日にどう手を打つかが最大の鍵だったんです。

また、定量調査に加えて、20名以上の方への定性インタビューも実施しました。そこでは、多くの方が自身の経歴に自信を持てず、「応募しても無理だろう」と諦めていたという実態も見えてきました。一方で「『ミイダス』は登録直後に「面接確約のスカウト」がたくさん届き、たったそれだけのことでものすごく勇気づけられ、一歩を踏み出すことができた」という声もありました。

そこで、この体験をすべての求職者へしっかりと届けることができれば、孤独な転職活動が「あなたに来てほしい」と企業から求められる体験になり、「自分ならできる」「うまくいく」という自己効力感を高める機会になる。そうすることで、登録初日の行動を変えられるはず、そう確信しました。

プロジェクトリーダーの藤元さん。

ヒントはHR業界の外にあった―30以上のサービスを自ら使い倒す

体験設計の方向性が定まってから、他社サービスや自社内の好調なサービスの調査も行ったと聞きました。

藤元:はい。まずは同業のサービスを調べる中で、「私たちが抱えている課題を解決しているサービスは無いのかもしれない。」と感じました。「それなら自分たちがやろう!」と意を決し、HR領域に閉じず幅広く調査に踏み出しました。

「利用の初期段階で自己効力感の変化を感じられるか」「知見のないユーザーでも迷わず感覚的にアクションできるか」という2つの観点で、教育、マッチングアプリ、不動産、SNS、フリマ、医療、旅行など、ジャンルを問わず30以上のサービスに、ミイダスのコアユーザーになりきって登録し、使い倒しました。最もフィットする体験を創り出していたのはマッチングアプリで、8〜9個ほど使い込む中で、登録直後に通知や演出で盛り上げてくれるアプリほど「このサービスは他とは違って、自分に合っていそうだ。もっと使ってみよう」と前向きになれることに気づき、この歓迎感の差が今回のUX変革の大きなヒントになりました。

加えて、社内で好調な電話スカウトサービス「スカウトプラス」の商談にも同席しました。彼らが順調に応募を獲得できている理由を探ると、求人詳細より先に「特別にあなたに会いたいと言っている企業がいる」と伝えることが心を開く最大の鍵だと分かったんです。この体験をアプリ上でも再現し、人を介さずとも自己効力感を高められないか試行錯誤を重ねました。

「企業側いいね」で伝える「歓迎」のUXへ―3つの体験変革

そこから具体的な変革を始めていったのですね。どのように変えていったのでしょうか。

藤元:まず、求職者自身が条件を絞り込んで探す「条件検索ファースト」という転職サービスの定石を撤廃しました。転職初心者には難易度が高すぎると考えたためです。そこで、企業からの働きかけで出会いを創出する「アプローチファースト」へ転換し、登録直後からタイムラグなく「いいね」が自動で届くロジックを設計。ラブレターが飛び交うような「賑わい感」を演出し、「自分で探すしかない」と身構える前に「自分を求めてくれる企業がある」と感じられる状態を作ったんです。

次に、「求職者は求人をじっくり読み込んで応募するはず」という自分たちの思い込みも疑いました。ミイダスのコアユーザーのペルソナを分析した際に「これだと思ったらまず感覚的に行動する」という性質が見えたためです。そこで、いきなり「応募」を迫らず、スワイプ操作で「いいね返し」ができるマッチングアプリ風のUIを採用。マッチング成立後は盛大に盛り上げ、そのまま一括応募できる「まとめて話を聞く」導線も用意し、「応募」へのハードルを下げました。

そして、散々歓迎感を出しておきながら最後に「応募」という重い決断を迫る「矛盾」も解消しました。マッチング後は即座にトークルームを開設し、「企業が会いたいと言っていますよ」という歓迎メッセージを配信。応募ボタンも「応募する」から「スカウトを受ける」に変更し、「申し込む」ではなく「相手のアプローチを承諾する」感覚に切り替えました。応募の質が下がる懸念もありましたが、求職者にとって自然な流れを作ることにこだわり抜きました。

実際の画面

圧倒的な開発力とAI活用で実現した、執念の「スクラップ&ビルド」

開発面では、今までにない大規模な仕様変更となったと伺っています。苦労された点はありましたか。

浅野:一番大変だったのは「作るもの」より「なぜ作るのか」を開発メンバーに納得してもらうことでした。今までにない仕様で難易度も高かったので、「絶対売れるから!」とメンバーへ100回くらい熱く語りました(笑)。結果的に全員が同じ目線に立ち、高いモチベーションで開発に挑めました。

サービスのバックエンド開発を担当する浅野さん。

漉磯:いざ開発に入ってからも「ここはこうしたい」という仕様変更が何度も発生し、2〜3ヶ月間、作っては壊す「スクラップ&ビルド」の連続でした。開発メンバーに「いつまでやるんだ」と言われながらも、「これで初日に応募してもらえるのか」を都度問い直し、全員でベストを追求しました。

浅野:この短期間での度重なる変更を乗り切れたのは、AIを活用できたことも大きいです。一方で個々のエンジニアだけでは、AIの能力を100%引き出せない課題も見つかるきっかけにもなりました。今後は組織として「AI駆動開発」を強力に推進していきたいですね。

驚異の数値が証明した成功、そして事業を救った実感

リリース後、圧倒的な反響があったそうですね。

藤元:はい。リリース直後、前年同期比で「面接確約求人」への応募数が435%を超え(2026年5月時点)、最初は「バグかな」と思ったほどです(笑)。データアナリストにも何度も数値の確認をお願いし、間違いなく伸びていると分かった時、初めて実感が湧きました。何より、「登録後すぐに声が掛かってワクワクした」「自分に興味を持ってくれる会社がこんなにあるのかと驚いた」という声が多く届き、求職者の自己効力感を実現できたことが一番の喜びです。

また、利用企業からも喜びの声がとても多く、社内の営業やCSからも「自信を持って提案できる」という声が寄せられました。

漉磯:我々開発陣としても、ビジネス上の数値に貢献できたという実感が持てて、本当にほっとしましたし、嬉しかったです。

サービスのフロントエンド開発を担当する漉磯さん。

これからも唯一無二の体験を目指したい

今後の展望を教えてください。

藤元:このプロジェクトはまだ道半ばで、プロダクト全体としてもやっとスタートラインに立った気持ちです。「初日」は求職者にとっても入口でしかないので、今回の施策をきっかけに増えた応募を、着実に転職・採用成功へつなげられるようにしていきたいです。数あるサービスに埋もれることなく、「唯一無二の体験ができるサービス」に進化させるべく、プロダクトの中長期戦略を見直しています。すべての求職者・利用企業が、『ミイダス』をずっと使い続けたいと思える確かな理由をつくることに、これからも向き合い続けたいです。

浅野:このプロジェクトを通じて、「なぜそれをするのか」という目的を正しく理解し、正しく伝えていく重要性を全員が再認識しました。今後はそこにAIの力を加えて、変革を短期間で回せる組織力をさらに磨いていきたいです。

漉磯:AI活用により、さらに「速さを武器に」していきたいですし、企画チームをはじめ様々な人とコラボレーションしながら、より良いサービスを創り上げたいです。

求職者と利用企業、双方にとってより良い出会いを生み出す――。今回のUX変革は、そうした挑戦を積み重ねてきたミイダスにとって、まだ一つの通過点に過ぎない。一人ひとりのCan(可能性)を見いだし、新たなTry(挑戦)を後押しする。採用の入口だけでなく、入社後の定着・活躍までを見据えた一貫した価値提供を目指すミイダスは、これからも顧客起点でプロダクトの進化を続けていく。

💡 バリュー体現ポイント

■ ふつうを疑う(OUT OF BOX)

転職サービスの定石を疑い、「条件検索ファースト」ではなく、企業からのアプローチで出会いを創出する「アプローチファースト」へ転換。

■ 速さを武器に(VALUABLE SPEED)

開発プロセスにおいてAIをフル活用し、ミイダスの開発力を120%引き出した。度重なる仕様変更に対しても圧倒的なスピードで実装を行う「スクラップ&ビルド」を回し続け、前例のないUI/UXを形にした。

■ それは最後の答えか(DIVE DEEP)

企画・開発・デザイン・分析・AIの職域を越えた横断チームで、CSや営業の声も吸い上げながら「本当に当初の目的を果たせるのか」を問い続けた。30以上のプロトタイプを作成・検証するなど、チーム全員が1ミリの妥協も許さずベストを追求し続けた。

💡 創出成果

  • 応募行動の劇的な変容:「アプローチファースト」へのUX転換により、登録初日の応募転換率が286%向上、一人あたりの応募数も385%向上し、求職者の行動が大きく変容した。
  • 過去最高の応募実績:『ミイダス』史上最高の月間応募数を記録。前年同期比で「面接確約求人」への応募数が435%伸長し、リリース後の応募数が84倍に増えた企業もあった。
  • 利用企業への価値提供:「面接確約求人」の応募急増により、求職者だけでなく利用企業にとっても「絶対に会いたい人との出会い」を創出し、継続受注に大きく貢献した。

今回お話を聞いた方

藤元 貴絵/Takae Fujimoto

ミイダス株式会社 プロダクト事業部 企画チーム リーダー

採用領域のプロダクト企画を担当。趣味は温泉旅行とスーパー銭湯巡り。

浅野 真之/Masyuki Asano

ミイダス株式会社 プロダクト開発部 バックエンドエンジニア

開発・企画間の仕様調整などを担う。趣味は登山。

漉磯 航也/Koya Sukuiso

ミイダス株式会社 プロダクト開発部 フロントエンドエンジニア

採用領域の内部チーム運営やフロントエンド開発を担当。趣味は旅行とランニング。

<メンバープロフィール>

■プロダクト事業部 企画チーム
小河 晴香 採用領域のプロダクト企画を担当。趣味は料理やパン作り。
藤澤 直 採用領域のプロダクト企画を担当。ワイヤーフレーム制作を中心に、アイデアを絵にして検討する役割を担う。趣味は楽器演奏(サックス)。

■プロダクト開発部
本田 翔太郎(アプリチーム エンジニア)アプリの保守運用・改善などを担当。趣味はカメラ、猫と遊ぶこと、カラオケ。

※以下、インタビュー時は不在
佐藤 晴己(エンジニア)
松野 優大(エンジニア)